注文・取引ルール

スリッページとは発生する理由・有利と不利・対策と許容幅の設定

スリッページは、注文したレートと、実際に約定したレートの差のことです。成行や逆指値で起こりやすく、有利にも不利にもなります。発生する場面と、対策を整理します。

公的機関・公式資料などの一次情報と照合して作成しています。このサイトについて

スリッページとは

スリッページ(slippage)は、注文を出したときのレートと、実際に約定したレートとの差です。「滑る」という意味で、約定価格が、希望した価格から滑ってずれる現象を指します。

種類 内容 損益への影響
不利なスリッページ 買いで高く、売りで安く約定した 損失が増える
有利なスリッページ 買いで安く、売りで高く約定した 利益が増える

ずれの方向は、必ず不利とは限りませんが、一般的に、急変動時は不利な方向のずれが目立ちやすいです。

なぜ起こるのか

  1. 注文から約定までの時間差:ボタンを押してから、サーバーで約定が処理されるまでの短い間に、レートが動く。
  2. 流動性の低下:市場に出ている売買の量が少なく、希望の価格に十分な注文がない。
  3. 急激な値動き:重要指標の発表直後、政策発表、地政学リスクのニュースなど。
  4. 窓開け:週末や休日の間に相場が大きく動き、再開時の価格が離れている。

発生しやすい場面

場面 理由
米雇用統計・FOMCなどの重要指標の直後 数秒で数十 pips 動くことがある
週明けの市場の寄り付き 窓開け(ギャップ)が起こりやすい
早朝や年末年始 参加者が少なく、流動性が低い
逆指値・ロスカットの執行 成行で執行され、急変動時にずれる

スリッページの具体例

逆指値の損切りが、スリッページで不利になった例です。

項目 内容
買いポジション 150.00円で1万通貨
逆指値(売り) 149.70円
指標発表後、急落し、約定したレート 149.40円
想定した損失 3,000円(30 pips)
実際の損失 6,000円(60 pips)

30 pipsのずれで、損失が2倍になっています。数量が大きいほど、影響も大きくなります。

対策

  • 指標の前後は取引を控える、または数量を減らす。
  • 成行注文に、スリッページの許容幅を設定できる会社では、小さめの値にする(設定を超えると、約定しない・再提示になる)。
  • スプレッドが広がっている時間は、新規のエントリーを避ける。
  • 重要な指標の前後では、ポジションを持ち越さない。
  • 約定力(約定力)に注目して会社を選ぶ。

スリッページの注意点

  • 指値注文は、指定価格より不利な価格では約定しません(有利な価格に滑ることは起こり得ます)。
  • 許容幅を狭くしすぎると、約定しないことが増えます。
  • 逆指値やロスカットは、成行で執行されるため、許容幅を設定しても、約定を優先する会社もあります。取引ルールを確認します。

スリッページでよくあるミス

  • 損切りの逆指値は、設定した価格でぴったり約定すると思い込む。
  • 経済指標の発表直後の値動きに、成行で飛びつく。
  • スリッページは、運や不運の問題だと考え、数量や時間帯での対策を取らない。

スリッページのチェックリスト

  • 自分の取引会社のスリッページの扱い(許容幅の設定、有利・不利の取扱い)を知っているか。
  • 重要指標の日程を確認し、前後の取引ルールを決めているか。
  • 損切りの価格を、ずれた場合の損失額で試算したか。

スリッページのFAQ(よくある質問)

Q. スリッページは、避けられませんか?
A. 完全に避けることはできません。ただし、取引する時間帯や、注文方法、数量を工夫して、影響を小さくできます。

Q. 有利なスリッページも、取引会社はそのまま約定させますか?
A. 国内では、金融庁の監督指針で、不利なずれは不利な価格で約定させる一方、有利なずれは顧客に還元しないといった「非対称な取扱い」や、不利な方向の許容幅だけを広く設定する取扱いは、問題のある行為として示されています。そのため、国内の登録業者では、有利・不利のどちらのずれも同じ扱いで約定させるのが原則です。具体的な扱いは、各社の取引説明書で確認します。

Q. ロスカットでスリッページが起こったら、補償されますか?
A. 補償されるのが一般的ではありません。約款に従って処理されます。

スリッページを、自分で記録する方法

取引日誌に、次の2つを、記録します。

項目 内容
注文時のレート 注文ボタンを押したときの、画面のレート
約定レート 実際の、約定価格

1〜2か月分を集計すると、自分の取引会社・時間帯・注文方法での、平均的なずれが分かります。この数字を、コストとして期待値に織り込むと、手法の実際の成績が、より正確に見えます(トレード日記)。

筆者の見解(スリッページ)

スリッページは、「想定した損失より、実際の損失は少し大きくなる可能性がある」ことを前提にする、という意味で、リスク管理の一部だと考えます。許容損失の上限を決める際に、余裕を見て数量を抑えることで、ずれが起きても、損失が許容範囲に収まりやすくなります。また、重要な指標の前後は、取引をしない時間として割り切る判断も有効です。

スリッページの関連項目

出典(一次情報)

本記事は情報提供を目的としており、投資助言・売買の推奨ではありません。「筆者の見解」は一つの考え方であり、結果を保証するものではありません。FX取引は元本を上回る損失が生じるおそれがあります。